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桜の精が見せた夢 ≪1話≫
4月になったばかりの金曜日の夜

俺は友達の山下と一緒に、上野公園の夜桜を見に出掛けた。

深夜2時を過ぎた公園は人も疎らで、俺達が仕事の話や会社の上司の愚痴などを零しながらゆっくりと歩いていると、大きな桜の木の下に一人佇む女性を見つけた。

「なぁ あの女の人泣いてないか?」

山下の言葉で女性の方を振り向くと、そこには見覚えのある顔が・・・。

「・・・広海さん?」

「お前知ってんの?」

「中学の時の家庭教師」

「・・・お前の初恋の?」

「お前そんな事よく覚えてんな」

山下の言葉に苦笑いをしながら俺は彼女に近づいた。

「広海さん」

驚いた彼女は俺の顔を見て涙を拭きながら、ちょっと怪訝そうな表情を見せた。

「俺だよ、和也。憶えてない?」

「和也・・・くん?」

「俺が中3の時、広海さんに家庭教師してもらってた、亀梨和也」

「えっ あの和也くん?」

驚いて俺の顔を見上げる広海さんの潤んだ瞳に嘘のようにキレイな満月が映りこみ、俺は息を呑みながら彼女に問い掛けた。

「こんな時間にどうしたの?」

俺の言葉に黙り込む彼女。

すると山下が「俺、今日は帰るわ」そう言って俺の肩を優しく叩いた。

「俺がいない方がいいだろ。彼女の話ゆっくり聞いてやれよ」

カッコ付けらしい爽やかな笑顔を見せ、右手をジーンズのポケットに突っ込み左手を軽く上げる山下。

「おぅ またな」

俺は軽く手を上げて答えると、俯いている彼女の顔を覗き込んだ。

「広海さん ちょっとベンチに座らない?」

指差した先にあるベンチに俺が腰を下ろすと、彼女はゆっくりと歩み寄り「和也くん大人になったね」と呟いた。

「俺もう24歳だよ。いつまでも子供のままじゃないよ」

「そっか・・・あたしも年取っちゃうわけだ」

「広海さんは31・・・だったかな?」

「良く憶えてるのね。・・・あたしおばちゃんになった?」

「そんな事ないよ。だって俺一目で広海さんだって気が付いたもん」

「うふふっ・・・お世辞でも嬉しい」

彼女はそう言って、また涙を浮かべて悲しそうに微笑んだ。

「ごめん。久しぶりに会ったのに・・・。和也くん困るよね。
ホントごめんね」

「大丈夫だよ。俺でいいんなら話聞くし、話したくないなら話さなくていい。
泣きたい時は泣いたらいいんだよ」

「もう・・・ホントにあの和也くんなの?
なんだか大人になってて、違う人みたい」

「違う人か・・・そうかもしれないね。
俺だってあれから色んな事経験して来たから、広海さんの知らない俺になってるのかもしれない。
今ならあの頃の俺には出来なかった事も出来るかな」

「出来なかったこと?」

「俺、あの頃広海さんの事好きだったんだ。
だけど15歳の俺には、それを伝える勇気がなかった。
7歳も年上のあなたにバカにされるのが怖かったんだ」

「バカになんて・・・」

「広海さんは俺の初恋だよ。だからあなたには幸せになって欲しい。
その為に出来る事なら俺、なんだってするよ」

「・・・和也くん」

「ねぇ その涙の訳を教えてくれない?」

俺の問い掛けに小さく頷くと、彼女はぽつりぽつりと言葉を選びながら話し始めた。

学生時代から付き合っていた彼と結婚して8年。

子宝に恵まれることはなかったけれど、大切にされていると思っていた。

しかし愛し合っていると思っていたのは自分だけで、本当はそうじゃなかったと・・・。

彼は数年前から浮気をしていたらしく、その相手が妊娠したから別れて欲しいと告げられて動揺した彼女は家を飛び出し、毎年二人で来ていた桜を見に来たのだと呟いた。

「ホントはね感じてたんだ。
彼にとって、あたしが女じゃなくなってるんじゃないかって・・・。
家族として大切に思っているけど、女として必要とされてないって。
でもそれを認めるのが怖かった。
だから彼の浮気に気付かないフリをしていたんだと思う」

「旦那さんの浮気に気付いてたの?」

「ハッキリとは分からなかったけど、なんとなくね」

「それで広海さんはどうしたいの?」

「分からない。裏切られたって気持ち強いけど、でも別れる決心はつかないの。
それに・・・一人でやっていく自信ない」

「生活のこととか?」

「新しい一歩踏み出す勇気ないよ。
あたしの事必要としてくれる仕事があるのか・・・とか。
一人で立って歩く方法忘れちゃった」

「すぐに一人で立つ必要ないんじゃない?
広海さんには家族だって、友達だっているだろ?
広海さんは一人じゃないから。必要なら、俺だって力になるよ」

「・・・ありがとう。
あたしまた歩き出せるかな? 幸せ見つけられるかな?」

「大丈夫だよ」

「こんなおばさんでも、新しい恋探せる?」

「だから広海さんはおばさんじゃないって」

「和也くんがそう言ってくれたら、本当のような気がしてきた。
ありがとうね」

「俺は本気で思ってるよ」

そう呟くと俺は彼女の頬に手を伸ばし、そっと唇を重ね合わせた。

驚いた表情の彼女を抱き寄せ「広海さんは今でも魅力的な人だよ」囁くように呟くと、彼女の手が俺の背中をギュッと抱きしめた。

「和也くん・・・お願いがあるの」

「いいよ。何?」

「あたしの事、嫌ったりしない?」

「何だよ、急に。お願いって何?」

「・・・抱いて欲しいの」

「えっ?」

彼女の言葉に驚き体を離すと、広海さんは俯きながら「自分が女なんだって思い出したいの。女性としての自信取戻したい。こんなこと言ったら軽蔑されちゃうかな?」って呟いた。

そんな彼女を俺はまた抱きしめる。

「そんな事ないよ。俺は大歓迎。
それで広海さんが自信取戻せるんなら、喜んで」

「・・・ごめん」

微かに震える声で謝る彼女を、俺はギュッと強く抱きしめた。


つづく・・・


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   hirari

Author:   hirari
中1の男の子、小3の女の子の母です。

亀ちゃんが好きすぎて息子に呆れられ、旦那に「うざい」と言われたちょっとアホな30代です。

仁亀萌えしておりまして、腐った発言多々あります(笑)。

今後もKAT-TUNと仁、両方を応援していきますのでよろしく!



ひと恋の弘人で亀堕しました。

めっちゃ長い「ひと恋」感想、小説「さがしもの ~弘人と菜緒~」など書いてますので、良かったら読んでやってくだパイ。


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