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桜の精が見せた夢 ≪3話≫
そしてまた、桜の季節が訪れた。

再会してから1年。彼女から連絡が来ることはなかった。

今となってはあの日の出来事は、夢だったのかもしれないとさえ思える。

樹齢300年を超える桜の木の下で見つけた彼女は、儚げで今にも消えてしまいそうだった。

俺が出逢った彼女はあの桜の木の精が見せた夢?

それとも彼女自身が桜の精だったのかもしれない。

9年間ずっと消えることのなかった彼女への思いに気付いた桜の精が、一瞬だけ俺に見せた夢。

きっと、そうに違いない。



週末の夜、山下に誘われ合コンに来ていた俺はひとり盛り上がることなく、チビチビとビールを飲んでいた。

隣に座った女の子はあからさまに俺に好意を表すが、どうもその気になれない。

「和也くん この後二人で抜けない?」

【和也くん呼びかよ】

「いや、この後予定あるからやめとく」

「え~!!!そんなのつまんない」

【いや、お前のことなんてしらねぇし】

彼女の誘いを適当な理由をつけて断った俺は、その場を離れるためにタバコを吸おうと店の外に出た。

「はぁぁ めんどくせぇ」

ポケットから取り出したタバコに火をつけ、ホッと一息吐き出した。

あの女の子だって可愛い子だし、タイプじゃない訳じゃない。

きっと前の俺だったら、そのままホテル・・・なんて事もあっただろう。

でも、今の俺は新しい恋なんて探してない。

俺が見つけたいのは、逢いたいのは広海さんなんだ。

「来るんじゃなかったなぁ」

俺の心の声が勝手に出てしまったのかと思うような言葉に驚き振り向くと「そう思ってねぇ?」山下がそう問いかけてきた。

「俺は・・・別に」

「亀 お前はどうしたいの?新しい恋探す気ないの?
お前が1年以上も彼女作らないの初めてだろ。だから今日だってお前のためにセッティングしたのに・・・」

「は? 俺の為?」

「1年待ったけど連絡ないんだろ?もう忘れろよ」

「別にそんなんじゃ・・・」

「俺に嘘言ってどうすんだよ。
お前は連絡先を書いたメモを渡した。だけど彼女からの連絡はない。
それが答えだろ」

「そんなの分かってるよ」

「そっ、ならいいけど」

山下の言うことは間違ってない。

頭では分かっているのに、心がそれを受け入れられない。

「で、この後どうすんの?」

山下はそう言って店の中を指差した。

「ごめん、帰るわ。ちょっと行きたいとことあるんだ」

俺は山下の誘いを断り、一人深夜の上野公園に行こうと思っていた。

何故だか分からないけど、あの桜の木に呼ばれているようなそんな気がして…。

一年振りに見る桜の木は今年も見事な花を咲かせ、春の風に吹かれてヒラヒラと儚く花びらを零していた。

「お前なんで俺を呼んだんだよ」

そんな事桜の木に問い掛けても答えてくれるはずもない。

それどころか、桜の木が呼んだと思ったのは俺の勝手な思い込み。

ふと見上げるとあの日と同じ様な満月が夜空に浮かび、冷めた顔をして俺を見下ろしている。

樹齢300年の桜の木と満月。

深夜の幻想的な世界で、俺は一人彼女へ思いを馳せた。

「なぁ もう彼女に逢う事出来ないのかなぁ?
・・・頼むよ。
もう一度彼女に逢わせてくれよ。
お前が俺と彼女を逢わせたんだろ?
だったら最後まで責任取れよ」

桜を見上げながらバカな独り言を呟き込み上げてきそうな思いに顔を歪ませた時、微かに木の枝を踏んだようなパキッと云う音が聞こえ俺はゆっくりと振り向いた。

するとそこには月明かりに照らされた桜の木々の中、瞳に涙をいっぱいに溜めた広海さんが立っていた。

「・・・なんで?」

ずっと逢いたかった彼女が突然目の前に現れ、瞬きをすることも忘れて俺は彼女を見つめた。

「分からない。何故だか桜の木に呼ばれているような気がしたの。
ここに来れば、和也くんに会えるような気がした」

「俺に会いに来たの?」

ゆっくりと一歩を踏み出すと彼女の元への歩み寄り、涙を拭う彼女をそっと抱きしめた。

「じゃあどうして連絡くれなかったんだよ。俺、ずっと待ってたんだ。
広海さんから連絡来るの、待ってた」

「ごめんなさい。
あの日家に帰って彼と話し合っている時に、和也くんの連絡先を書いた紙が見つかってしまって、燃やされちゃったの。
まだ携帯に登録もしてなくて、どうすることも出来なかった」

「俺の会社教えたじゃん」

「うん。だから一度逢いに行ったの。
そしたら和也くんが女の子と出て来て、声・・・掛けられなかった」

「俺がどんな思いでこの1年間、広海さんのこと待ってたと思うんだよ」

「あたしも和也くんに逢いたかった。こんな風に抱きしめて欲しかった」

「お願いだから、もう消えないで。
ずっと、ずっと傍にいてよ」

俺の腕の中で彼女は何度も小さく頷き、俺は今抱きしめている彼女が幻じゃないと確かめるようにギュッと強く抱きしめた。




桜の精 お願いだから、二度と彼女を消さないで。
俺から彼女を奪わないで。
さっきは文句言ってごめんな。
もう一度彼女に逢わせてくれてありがとう。




俺達を見下ろすように立っている桜の木に見せ付けるように、俺達は何度も何度も熱いキスを交わした。

10年越しの俺の初恋は、こうして桜の精が見せた夢によって花を咲かせることが出来た。

桜の花のようには、決して散ることのない花を・・・。



おわり



上野公園に樹齢300年の桜の木なんてないよね?

その辺は許してぇ(笑)

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   hirari

Author:   hirari
中1の男の子、小3の女の子の母です。

亀ちゃんが好きすぎて息子に呆れられ、旦那に「うざい」と言われたちょっとアホな30代です。

仁亀萌えしておりまして、腐った発言多々あります(笑)。

今後もKAT-TUNと仁、両方を応援していきますのでよろしく!



ひと恋の弘人で亀堕しました。

めっちゃ長い「ひと恋」感想、小説「さがしもの ~弘人と菜緒~」など書いてますので、良かったら読んでやってくだパイ。


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