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さがしもの 弘人と菜緒 ≪ 12話 ≫
深夜の誰もいない救急病院の手術室の前。

弘人は一人呆然とし、力なくソファーに座り込んでいた。

自分の目の前で起こった出来事が信じられず、震える手をギュッと握り締め彼女の無事を祈っていると、菜緒の両親、そして兄の達也が顔色を変えてやってきた。

弘人を見るなり凄い勢いで胸倉を掴み

「なんでこんな事になったんだよ」

達也が彼を怒鳴りつけると「今そんな事を言っても仕方ないでしょ!とにかく手術が無事に終わることを祈りましょう」と言って母親は息子を宥めた。

達也の言葉に黙り込み俯く弘人に「大丈夫だ。あの子はあんな病気にも勝った子だ。だからこんな事じゃ死なないよ」父親はそう呟き、彼の肩を優しく叩いた。

静まり返った待合室。

達也の貧乏ゆすりの音と溜め息だけが聞こえる中、誰かの足音が近づいてくるのが聞こえ振り向くと、警察の人が「弘人さんって方はいますか?」と問い掛けてきた。

「はい。僕ですが・・・」

「これが事故現場に落ちていましてね。
被害者女性の物じゃないかと思ったものですから。
あなたで間違いないですか?」

差し出された小さな箱には可愛いピンクのリボンと「弘人へ」と書かれたカードが添えられていた。

それは間違いなく菜緒の字だ。

「はい。間違いないです」

そう言って弘人は小箱を受け取ると、彼女がなぜ自分を追いかけてきたのか理由が知りたくて、すぐにリボンを解いて中身を確認した。

中に入っていたのは、可愛いクジラのキーホルダーに付けられた鍵。

それが菜緒の部屋の鍵だと云う事は直ぐに分かった。

手にした鍵を握り締めると、壁にもたれ掛かり崩れるようにして座り込んだ弘人。

自分の父親が亡くなった時でさえも泣かなかった彼が、大粒の涙を流し何度も何度も彼女の名前を呟きながら泣き崩れた。

ほんの数時間前まで菜緒は俺の腕の中にいたのに。

菜緒の柔らかい髪の感触も、暖かい温もりもこんなにもはっきり憶えている。

もうずっと離れないよ。毎年一緒にイブを過ごそうね。

そう約束したばかりだったのに・・・どうして。

お願いだ。もう俺から菜緒を奪わないでくれ。

もう二度と菜緒を失いたくない。

肩を震わせ小さくなって泣き崩れる彼を見て、もう誰も声を掛けることは出来なかった。

それから数時間後、手術中のランプが消えると担当医が手術室から出てきて、父親が少し震える声で問い掛けた。

「先生、娘は、娘はどうなんですか?」

一呼吸置いて話し始める担当医。

「手術は成功しました。ただ・・・」

「ただ?」ごくりと唾を飲み込む。

「腕や足の骨折などはリハビリをすれば生活になんの問題はくらい回復すると思うのですが、頭を強く打たれているので、意識が回復してみないと何とも言えません。
何か障害が残るかもしれませんので、その辺は覚悟しておいてください」

担当医はそう言って会釈をして、また手術室に戻っていった。

「取りあえず命は助かったんだから喜びましょ」

母親がみんなを励ますように出来るだけ明るく声を掛けると「そうだな。これからの事は菜緒の意識が戻ってから考えよう」父親がホッとしたように呟き、小さく頷く母親と達也の隣で弘人一人が何か大きな不安に包まれていた。



菜緒が意識を取戻した時絶対に彼女の傍にいたかった弘人は、それから3日間仕事を休んで泊りがけで彼女に付き添った。

朝方、ベッドの脇にうつ伏せてウトウトしていると「・・・ぅ~ん」菜緒の声が聞こえた気がした弘人は、「菜緒!菜緒!」彼女の手を握り締めて、何度も何度も名前を読んだ。

するとそこへ菜緒の両親が現れ「どうしたんだね 弘人くん?」父親に問い掛けられた彼が「今菜緒が声を出したんです」と答えると「ホント?菜緒!菜緒!」母親も一緒に彼女の名前を呼び始めた。

すると弘人が握り締めている彼女の手の指がピクリと動き、菜緒がゆっくりと目を開け「お母さん」と一言呟いた。

病室にホッとした空気が流れる。

「ここどこなの?」

不思議そうに問い掛ける娘に「病院よ。あなた交通事故に遭ったのよ。でももう大丈夫」母親がそう答えると「交通事故?」菜緒はそう呟いて自分の手を握り締めている弘人を見て首を傾げた。

「お母さん この人誰?」

「何言ってるの? あなたの婚約者の弘人くんよ」

「お母さんこそ何言ってるの? あたしまだ高校生だよ。結婚なんて・・・・」

真顔で答える彼女の様子を見て、体から力が抜けていく弘人。

握り締めていた彼女の手がするりと離れ落ちると、視界から全ての色を無くしたような感覚が彼を襲った。

彼女の中から自分の存在が消えてしまったと云う事実が、直ぐそこまで訪れていた二人の幸せを奪い去ろうとしている。


つづく・・・
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  • さちかめ
  • そうきたか!?
    いや~そうきましたか!?
    どんな障害が残ろうと、弘人は全てを受け止めると思ったんだ!
    きっと、菜緒が生きてれば、障害は障害にならない!だから、誰がなんと言おうと菜緒の傍を離れないと思ったんだけど、自分を忘れられちゃったら、弘人には一番辛いね(>_<)

    生きてる!それだけで良かった!って身を引く?

    う~ん、韓国ドラマみたいだね~(笑)

    どうなる!?


    しかし、鍵を見た時の泣き崩れる弘人(T_T)

    辛いやね~(T^T)
  • runa
  • 弘人・・・菜緒・・・
    でも、それぞれのドラマのキャラ壊さず書かれてて嬉しいです!!
    菜緒ママ、愛情あり周りを気遣い明るくしようとしそうですもんね。
    それにしても読んでてふと思ったのですが、亀ちゃんのこういう泣きの演技も見たくなりました~っ!!ウズウズっっ!!
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    ホントに読めないんです。ごめんなさい。

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    ごめんなさい


    ひらり
    プロフィール

       hirari

    Author:   hirari
    中1の男の子、小3の女の子の母です。

    亀ちゃんが好きすぎて息子に呆れられ、旦那に「うざい」と言われたちょっとアホな30代です。

    仁亀萌えしておりまして、腐った発言多々あります(笑)。

    今後もKAT-TUNと仁、両方を応援していきますのでよろしく!



    ひと恋の弘人で亀堕しました。

    めっちゃ長い「ひと恋」感想、小説「さがしもの ~弘人と菜緒~」など書いてますので、良かったら読んでやってくだパイ。


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    魂での亀ソロを見て頭の中に浮かんで来たストーリーを小説にしてみました。

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    良かったら読んでみてください。


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    まだまだ下手くそですが、少しづつ書き続けていくので良かったら読んでください。

    「さがしもの 弘人と菜緒」
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