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さがしもの 弘人と菜緒 ≪ 14話 ≫
菜緒に逢う為に病院を訪れた弘人。

彼女が自分に対してどんな反応を見せるのか不安になっていた彼が病室のドアを開けられないでいると、スーっとドアが開き菜緒の母親が中から出てきた。

「あらっ弘人くん。何してるの?中に入って!」

母親は弘人の腕を掴み引き入れると「どうぞ!」そう言ってベッドの隣に椅子を出し「お母さん売店に行ってくるわね」財布を手にして出て行ってしまった。

沈黙が病室の中を支配する中、優しい目で菜緒を見つめる弘人。

しかし菜緒は、そんな風に彼に見つめられてどうしていいのか分からない。

思わず顔を逸らし窓の外に視線を逸らしたが、彼の事が気になり視線を戻すと彼は菜緒を見つめたままだった。

母親から弘人が恋人だと聞いてはいても、今の菜緒にとっては彼は全くの知らない人。

その知らない人に優しい眼差しで見つめられ、菜緒は恥ずかしいとも違う不思議な感覚を感じていた。

長い沈黙の後、弘人に問い掛ける菜緒。

「ねぇ あたしは本当にあなたの恋人だったの?」

「うん。そうだよ」

彼女を包み込むような優しい声で答える弘人。

「あたしはあなたを何て呼んでいたの?」

「弘人って呼んでたよ」

「呼び捨てなの?」

「そう。俺が最初にそうしてって言ったから」

「なんだか・・・呼びにくいね」

「別に呼び方なんてどうでもいいよ。好きに呼べばいい」

「じゃあ・・・弘人くんでいい?」

「いいよ」

そう答えたものの、弘人は菜緒に距離を作られたようで寂しい気持ちになった。

しかし彼女にはそんなつもりはなかったのだ。

ただ知らない男性を呼び捨てにするなんて恥ずかしかっただけ。

「菜緒 俺はどうすればいい? 今までと同じようにしてていいのかな?」

囁くような優しい問い掛けに、弘人の顔を見つめる菜緒。

「菜緒にとって今の俺は知らない人だろ? 
でも俺にとっては菜緒は菜緒で・・・。どうしていいのか分からないんだ。
今までのように菜緒の傍にいたけど、菜緒の気持ちはどうなんだろう・・・って」

「・・・ごめんなさい」

彼に謝ることしかできない菜緒。

「謝らなくていいよ。菜緒が悪いわけじゃないし。
ただこのまま想い出してもらえなかったら・・・って不安にはなるけど」

弘人の言葉が菜緒の胸を締め付ける。

自分が記憶をなくしたせいで、こんなにも彼を苦しめているなんて。

言葉に困り黙り込んだ彼女を見て、慌てて謝る弘人。

「ごめん。菜緒にそんな顔させるために来たんじゃないのにな」

出来るだけ明るい声で話す彼に、菜緒は黙って横に首を振って答える。

「菜緒 また逢いに来ていい?」

弘人の問い掛けに「いいよ」と答える菜緒。

「じゃあ また来るね」

弘人がそう言って、いつものように彼女の頭をポンポンと優しく叩こうと手を伸ばすと、菜緒の体が無意識にビクッと云う反応を見せた。

それを見て、彼女に触れそうになった手を握り締め小さく溜め息を漏らせると「またね」悲しそうな笑顔を見せ彼は病室を出て行った。

いつも彼女が好きだと言っていた行為さえも、今の彼女には届かない。

こんなに近くにいるのに、触れることも出来ないなんて。

病室の外、弘人は自分の掌をジッと見つめて深い溜め息を漏らせた。




年が変わるその時間。家の窓から外を眺めながら彼女を思う弘人。

何の疑いもなく、二人で一緒に除夜の鐘を聞くと信じていた。

あの日までは・・・。

どんなに傍にいても、触れることさえも出来ない現実。

もう離すことはないと思っていた菜緒の手が、今はとても遠くに感じる。

「ねぇ お兄ちゃん」

その時、廉が話しかけてきた。

弘人はカーテンを閉めると、弟の話を聞くために傍にあった椅子に腰を下ろして廉の方を向いた。

「菜緒姉ちゃんの事考えてたの?」

「何で?」

「お兄ちゃん 凄い悲しそうな顔してたから・・・」

「・・・・・・」弘人は何も言えなかった。

「お兄ちゃんは菜緒姉ちゃんの何が好きなの?」

「えっ?」

「お兄ちゃんが好きなのは、記憶がある昔のお姉ちゃんなの?」

「そうじゃないよ。今の菜緒だって同じ菜緒だから・・・」

「じゃあ、どうしてそんな顔するの?
菜緒姉ちゃんが無事だったんだから、それでいいんじゃないの?」

廉の言葉に弘人はハッとして、あの日病院で菜緒の命が助かればそれでいい。そう思って泣いた事を思い出した。

彼女の命が助かれば、それ以上は何も望まない。そう思ったはずだったのに・・・。

「そうか、お兄ちゃん大事なこと忘れてたんだな。
菜緒が生きている、それだけでいいんだよな。大事なこと気付かせてくれたありがとうな、廉」

弘人は優しく微笑みながら、自分の気付かない間にか廉が大人になっていた事に驚いていた。

弘人は心の中に立ち込めていた深い霧が晴れそうな気配を感じて、ちゃんと今の菜緒と向き合ってみようと気持ちを新たにして歩き出す決心をした。

真っ暗な夜に響き渡る除夜の鐘を聞きながら・・・。


つづく・・・

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  • runa
  • 触れたくても触れられない。
    苦しいですよね。
    でも廉君ナイス!!
    昔から可愛い弟ですね!!
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       hirari

    Author:   hirari
    中1の男の子、小3の女の子の母です。

    亀ちゃんが好きすぎて息子に呆れられ、旦那に「うざい」と言われたちょっとアホな30代です。

    仁亀萌えしておりまして、腐った発言多々あります(笑)。

    今後もKAT-TUNと仁、両方を応援していきますのでよろしく!



    ひと恋の弘人で亀堕しました。

    めっちゃ長い「ひと恋」感想、小説「さがしもの ~弘人と菜緒~」など書いてますので、良かったら読んでやってくだパイ。


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    魂での亀ソロを見て頭の中に浮かんで来たストーリーを小説にしてみました。

    切なくて甘いお話です。

    良かったら読んでみてください。


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    趣味で始めた小説
    まだまだ下手くそですが、少しづつ書き続けていくので良かったら読んでください。

    「さがしもの 弘人と菜緒」
    ≪ 全25話+特別編 ≫

    「あなたの笑顔 わたしの涙」
    ≪ 全58話+番外編 ≫

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