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さがしもの 弘人と菜緒 ≪ 15話 ≫
年が明け仕事が始まり忙しくなっても、弘人はなるべく時間を作って菜緒に逢いに行くようにしていた。

相変わらず「弘人くん」と呼んでくる菜緒。

それがちょっと照れくさかったりするけど「それも新鮮でいいのかな?」なんて思ったりもしている。

これと云って特別何をするわけでもなく、ただ彼女の暇つぶしの相手になれればいい。

それくらいの気持ちで弘人は、彼女と他愛もない時間を過ごしている。

そして菜緒は彼が逢いに来てくれることが、正直嬉しかった。

自分が記憶を取戻さない事への罪悪感も感じていたし、両親や友達から「何か思い出した?」と聞かれることが辛かった菜緒にとって、何も言わずにただ傍にいてくれる弘人の存在は救いだった。

他愛もない話をする為に仕事の合間を見つけては逢いに来てくれる彼。

それだけで記憶をなくす前の自分が、どれだけ大事にされていたのかも想像できた。

「ごめんね」

何気ない会話の中で、突然菜緒が謝った。

「どうしたの?」

驚いて彼女の顔を覗き込む弘人。

「記憶全然戻らなくて、ごめんね」

「いいよ。いつか戻るかもしれないし、もし戻らなくても・・・それでもいいよ」

「どうして? あたし弘人くんの事何も覚えてないんだよ。 それでもいいの?」

「いいよ。菜緒がこうやって生きててくれた。 今はそれだけでいいんだ」

自分を優しい瞳で見つめて囁く弘人の言葉に、菜緒は胸の奥が微かにざわつくのを感じた。



会社の方では社長の娘が事故に遭った事。そして記憶をなくしてしまった事がどこからか漏れ、噂の的になっていた。

その娘の恋人が弘人だと知らない会社の先輩達は、彼の前で平気でその話題をしたりもする。

「お嬢さんって学校の先生だったんでしょ?
これからどうなるんだろうね」

「恋人とかいたのかな? もしいたら彼氏可哀想だよね」

そんな会話が繰り広げられることも少なくなく、そんな時決まって香川が「そんな話、社長の耳に入ったらどうするの?」そう言って話を中断させた。

彼に少しでも嫌な思いをさせないようにと気遣う香川。

今の弘人には、彼女の優しさは正直有り難かった。



それから数日後、裕子が神戸からお見舞いにやって来た。

病室に入るなり「ごめんね、菜緒。すぐにお見舞いに来れなくて」そう言って謝る裕子の顔をジッと見つめて「裕子大人っぽくなったね」菜緒はそう呟いた。

「何言ってるの菜緒。あたし達もう27だよ」

「・・・らしいね」

「そっか、実感ないんだ?」

裕子の言葉に黙って頷く菜緒。

「体の方はどう?」

「うん、大丈夫!もうすぐ車椅子に乗れるようになるの。

そしたらトイレだって行けるし、散歩だって行けるよ」

一生懸命に笑顔を見せる菜緒だったが、裕子には無理していることは分かっていた。

「ねぇ 元気ないけどどうしたの? 何かあった?」

「・・・裕子には分かっちゃうんだね。
お父さんとお母さんに記憶を思い出せって言われると辛くって」

「思い出せって言うの?」

「ハッキリとは言わないよ。でも分かるの・・・遠まわしに言ってても。
思い出せって言われる度に、今の自分を否定されてるみたいでなんかね・・・」

「弘人くんは何て言うの?」

「ゆっくりでいいって・・・もし思い出さなくても構わないって」

「じゃあ、思い出さなくてもいいんじゃない?」

「えっ? そんな事可哀想だよ・・・弘人くんが」

「ねぇ 菜緒。あたし思うんだけど、このまま記憶取戻さなかったとしても菜緒と弘人くんは大丈夫だと思うよ」

「どうして?」

「だって弘人くんと菜緒の絆は、菜緒が記憶なくしたくらいじゃなくならないよ。
あたしずっと二人を見てきたんだよ。それくらい分かるよ。
菜緒はねぇ・・・きっとまた、弘人くんに恋をするよ。
記憶なんて全然関係なくて、今の菜緒が弘人くんを好きになる。
菜緒・・・いらないこと考えずに真っ直ぐに彼を見てごらん。
そして、もしその時が来たら素直になりなさいよ。
きっと弘人くんは全部受け止めてくれるからね」

菜緒は裕子の言葉に小さく頷いて答えた。

ホントにそんな日が来るのかなぁ?



もうすぐ2月になると云う頃。菜緒はやっと車椅子に乗ることを許された。

まだ介助がないと乗れないが、トイレに行ける事はもちろん、散歩に出れることが何より嬉しかった。

彼女が車椅子に乗れるようになったその週、ずっと仕事が忙しく1週間ほど顔を出すことが出来なかった弘人が久しぶりに彼女の元を訪れた。

弘人が病室のドアをノックし部屋に入ると、菜緒は一人車椅子に乗る練習をしていて「弘人くん」嬉しそうに顔を上げた瞬間、バランスを崩し倒れそうになった。

咄嗟に彼女を受け止める弘人。

そして「いい?」確認をしてから彼女を優しく抱き上げベッドに運んだ。

「・・・ありがとう」

突然の出来事にドキドキしながら恥ずかしそうにお礼を言う菜緒に「何やってんだよ。もし倒れたりして繋がりかかった骨がまた折れたらどうするんだよ」そう言って怒る弘人。

初めて彼に怒られた菜緒は目を丸くして驚いている。

「・・・あっ ごめんなさい。弘人くんでも怒るんだね」

「当たり前だろ。こんな事したら心配するに決まってるだろ」

「だって弘人くん、あたしの前ではいつも穏やかで怒ったりした事ないから・・・」

「そうだな。最近菜緒とケンカしてないな」

そう呟いて口元を綻ばせる彼の表情が、昔を思い出し懐かしんでいるように見え菜緒は胸が苦しくなった。

弘人くん、ああ言ったけどやっぱり思い出して欲しいんだよね。

「ねぇ 何で無理して車椅子に乗ろうとしてたの?」

弘人がそう問い掛けると「早く一人でも散歩に行けるようになりたかったの。

部屋にずっといると息が詰まるよ」不満そうに答える菜緒。

「わかった。じゃあ散歩に行こうか」

弘人は彼女に優しく上着を掛けると、車椅子に乗せて中庭の散歩に連れ出した。

今日は天気が良くこの時期にしては暖かい方で、弘人は車椅子を押しながらゆっくりと歩いた。

「菜緒 仕事の方はどうなるか聞いた?」

「うん。お母さんに聞いたよ。
あたしの記憶が戻らないことも話した上で取りあえず退院して1ヶ月ぐらいまでは休職にして、その後はリハビリを兼ねて学校の方にアルバイトとして一日数時間 週2~3回ぐらいで通うのはどうですか?って校長先生が言ってくれたみたい」

「いい話じゃん 受けるの?」

「まだ自信ないな。だって学校の先生なんて出来るのかな? 今のあたしに・・・・」

「難しく考えなくていいんじゃない。
記憶がなくてもきっと体が覚えてることもあるだろうし、リハビリを兼ねてって言ってくれてるんだろ?」

「うん もうちょっと考えてみるね」 

今のあたしじゃダメだよ・・・きっと。

彼女の表情が曇ったことに気付いた弘人は、それ以上仕事の話をするのは止めることにした。

「リハビリ始まるんだろ?いつからなの?」

「来週かな?」

「かな?って・・・自分のことだろ!」

弘人は呆れたように笑うと「辛いだろうけど、ばんばってね」そう言って彼女を励まし、彼の顔を見上げながら菜緒はニッコリ笑って頷いた。



つづく・・・

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  • さちかめ
  • そうだよね
    記憶がなくても、また新たに惚れ直してってあるよね(*^_^*)

    辛いと思うけど、いつかきっと記憶が戻るよ!!

    もどかしさは菜緒もあるから辛いと思うけど、親友の裕子ちゃんの言葉を信じて、弘人を真っ直ぐ見て、又弘人に恋してごらん(*^_^*)

    いつか、ふとした瞬間に記憶が戻ったりするから(*^_^*)

    って、少女漫画の読み過ぎかしらん(笑)
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    Author:   hirari
    中1の男の子、小3の女の子の母です。

    亀ちゃんが好きすぎて息子に呆れられ、旦那に「うざい」と言われたちょっとアホな30代です。

    仁亀萌えしておりまして、腐った発言多々あります(笑)。

    今後もKAT-TUNと仁、両方を応援していきますのでよろしく!



    ひと恋の弘人で亀堕しました。

    めっちゃ長い「ひと恋」感想、小説「さがしもの ~弘人と菜緒~」など書いてますので、良かったら読んでやってくだパイ。


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    まだまだ下手くそですが、少しづつ書き続けていくので良かったら読んでください。

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